2006年05月26日 00:00 〜 00:00
プラナーブ・ムカジー・インド国防相

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会見リポート

21世紀の大国へしたたかな戦略

山内 聡彦 (NHK解説主幹)

日本が中国への対抗勢力としてインド重視の姿勢を強める中、インドのムカジー国防相が訪日した。商業相や外相を歴任し、おととしのマンモハン・シン政権の発足以来、国防相を務める実力者だ。去年4月の小泉首相のインド訪問の際、両国は安全保障対話・協力の拡充など、グローバル・パートナーシップ強化のための8項目の行動計画に合意した。今回の訪日はこの計画の一環である。

そのムカジー国防相が記者会見で強調したのが、アジアの安全保障をめぐる環境が同時多発テロ以来大きく変わり、マラッカ海峡を含むインド洋のシーレーンの安全の強化など、日印両国の戦略的な協力の必要性が高まっているということだった。

また3月にアメリカと結んだ原子力協定について、核保有国として世界的に認められたかどうかはわからないが、急速な経済成長に伴うエネルギー需要に対応するものだと強調し、協定がアメリカ議会で批准されるよう強い期待を表明した。

また大量破壊兵器の拡散防止については、インドはNPTの加盟国ではないが、その規定のほとんどを自発的に守っていると強調し、地域の脅威に対応するため、「最小限の信頼できる抑止力」を必要としていると述べた。

ムカジー国防相は中国との関係については、両国が抱える問題は武力ではなく、対話によって解決されるべきだとの考えを示し、上海協力機構への正式加盟や中ロの合同軍事演習への参加の可能性についても慎重な姿勢を示した。インドは日本との関係を強化するとともに、かつて戦火を交えた中国とも関係を改善しつつあり、会見では21世紀の大国として影響力を高めようとするしたたかな戦略が感じられた。

ゲスト / Guest

  • プラナーブ・ムカジー

    インド国防相

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