2006年05月10日 00:00 〜 00:00
唐沢祥人・日本医師会会長

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会見リポート

信頼される職能集団へ

阿部 文彦 (読売新聞社会保障部)

診療報酬が大幅に引き下げられるなど、小泉改革の最大の被害者でありながら、国民の同情を全く買わないのが日本医師会だ。4月に現職候補を破り、16万会員のトップに立った新会長の会見に聴衆は耳をそばだてた。

まず、自民党との関係について、「政権政党と話し合えないと、意見を取り上げてもらえない」とした上で、「医師会のしっかりとした医療政策提言を聞くことが、政党にとっても有利だという関係を築きたい」と今後の方針を述べた。

実は、今回の会長選に対する世評は芳しくなかった。唐沢会長が昨年末の診療報酬改定で政治力を発揮できなかった前執行部を批判したこともあり、「政権政党との距離感」のみが争点となったからだ。言葉通り、質の高い医療政策提言を影響力発揮の唯一の手段とするのか、それとも政治献金や選挙協力に走るのか。旧来型の圧力団体とのイメージを払しょくし、国民に信頼される職能集団たりえるかの分水嶺となりそうだ。

もうひとつ、関心を集めたのが、へき地、産科などの医師偏在の問題だ。唐沢会長は、(1)国民医療にどのような役割を果たすべきなのかを、医学教育で学ばせる(2)医師が少ない分野を経験した場合、将来的に大きな評価が得られるようなシステムを築く(3)女性の医師の活用──の3点を解決策として示した。正論だが、容易ではない。

離島で医療に従事しようという使命感に燃える医師を育てるのは難しい。要は、大きな評価の中身をどうするのかだ。厚生労働省は診療所開業の要件とする案を出したが、つぶれてしまった。国や大学病院まかせではなく、医師会こそが自らの問題として会員に問い、具体的な解決策を示すべきだろう。


ゲスト / Guest

  • 唐沢祥人 / Yoshihito Karasawa

    日本医師会会長 / President, Japan Medical Association

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