2006年04月25日 00:00 〜 00:00
沈潔・浦和大学教授「中国経済」9

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会見リポート

中国の深刻な年金、高齢化問題

藤村 幸義 (個人会員 (拓殖大学教授))

中国でも少子高齢化が急速に進んでおり、すでに高齢化率(65歳以上)は7%を超えている。これまでは無尽蔵で安価な労働力の供給が経済の急成長を可能にしてきた。ところが生産年齢人口はあと7、8年もすれば減り始め、いずれ労働力不足時代がやってくる。経済成長にも大きな影響を与えかねない。

沈潔氏によれば、中国の少子高齢化には(1)高齢者の絶対数が多い(2050年には4億人を超える)(2)高齢化スピードが速い(3)高齢者の分布に地域差がある(上海市は1979年に早くも高齢化率が7%を突破)(4)日本などと比べ経済成長レベルがまだ低い段階で高齢化を迎える、といった特徴がある。

日本と中国の年齢別人口構成グラフを比べてみると、2つの山が存在する(第一次・第二次ベビーブーム)など全体の形は極めて類似していて、「なるほどこういう分布をしていると高齢化問題が起きるのか」と納得する。

ところがより子細にみると、山谷の落差は中国の方が大きく、いずれは日本よりも深刻な少子高齢化問題に悩まされるのではないか、と予感させる。

財政面への影響はすでに表れている。養老年金をみても、財政面からの補てんは年々増える一方である。養老年金のカバー率はまだ3割程度でしかないのに、早くも財政圧迫要因になっている。医療保険や失業保険はより深刻な状況にあるらしい。

いかにして社会保障の財源を確保するか。沈潔氏は(1)国有資産を社会保障基金に移転する(2)養老年金債券を発行する(3)福祉税を導入する、などと具体的に提案している。

しかし政府の対応は後手に回っていると言う。これでは駆け足でやってくる少子高齢化に間に合わないのではないか、そんな思いを強くした。

ゲスト / Guest

  • 沈潔 / Shen Jie

    浦和大学教授 / Professor, Urawa University

研究テーマ:中国経済

研究会回数:9

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