2006年04月19日 00:00 〜 00:00
羅鍾一・駐日韓国大使

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会見リポート

あわや〝激突〟かというときに

小林 一博 (東京新聞論説委員)

日韓関係が最悪の時に当たった。

今回のスピーチに、大使は「新たなる韓日関係の展望」とタイトルを付けた。しかし、竹島周辺での日本の海洋調査をめぐり日韓激突かという情勢、関心はどうしてもいまの両国関係に。取材する側には実にいいタイミングだったが、対日外交の責任者としては慎重さが必要だったに違いない。

2年前に就任したとき、「未来指向的関係の維持」「格式にとらわれない首脳会談の年2回開催」が使命だった。しかし「その後は継続して関係悪化してきた」のが実情だ。原因は「日本から出てきている」と、政治家の神経を逆なでする発言や竹島の日制定などをあげた。

竹島海域の海洋調査は「日本の歴史歪曲の延長線上のこと」、首相の靖国参拝は「外国に誤ったメッセージを与える」など、盧武鉉政権の対日政策の忠実な表明だった。

小泉首相の靖国参拝には、韓国だけでなく日本国内にも反対論は強い。それに日本の方からみると、盧政権はあまりに過去にこだわり、からめすぎるきらいがある。しかし、微妙な時期、公式発言しかできないのは無理からぬところか。

日韓の国交樹立から40年。皮肉なことに、両国関係をリードすべき政治の分野だけがぎくしゃくし、それ以外の関係は実にうまくいっている。為政者の仕事の一つは、国内の偏狭なナショナリズムを抑えることだ。なのに日韓首脳はむしろあおる方に回っている。外交官の仕事にはおのずから限界がある。

「日韓が追求する理念は同じ。この地域の不安定要因をうまく管理するため、両国が安定の核になるべきだ」「日韓関係は良くなるべきだし、よくすべきだ」。今回、もっとも強調したかったところだろう。

ゲスト / Guest

  • 羅鍾一 / Ra Jong-yil

    大韓民国 / Republic of Korea

    駐日韓国大使 / Ambassador to Japan

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