2006年04月11日 00:00 〜 00:00
アン・ベネマン・ユニセフ事務局長

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会見リポート

行動力と温かいまなざし

田中 寛 (共同通信外信部)

米ブッシュ政権の農務長官から1万人のスタッフを率いる国連児童基金(ユニセフ)事務局長へ。

履歴書からは「鉄の女」を想像していたが、会ってみるとどこか柔和な感じさえ受ける。何より印象的なのは、世界中を飛び回る「行動力」と、発展途上国の子どもたちに向けられた温かい「まなざし」である。

例えばスマトラ沖地震やパキスタン地震。発生後すぐに自ら現地を訪れ、災害に泣く子どもたちの様子を見届けた。パキスタンでは、犠牲者7万3千人のうち半分が子ども。中でも、校舎が崩壊し下敷きになって亡くなった児童らが1万7千人にも上るという事実に「本当に難しい(状況だ)」とつぶやくように語った。

「ユニセフが特に力を入れているのは女の子を学校に就学させること」とも。事務局長は、女の子の就学に否定的な国が今も数多く存在すると指摘、「女の子に教育の機会を与えることで、早すぎる結婚などの問題を防ぐことにもなる」と教育の重要性を訴える。

世界各地を訪れ、肌で実感したのは「子どもたちはみな学習する意欲がある」ということだと言う。

最近訪れたタンザニアでは、小学校をせっかく卒業しても中学校のスペースが限られているため進級できるのはほんの一握り。子どもたちは口々に、どんなに自分が学校に行きたかったかを事務局長に訴えた。

中学に進むのが当たり前の日本では想像もできない現状だ。体験に基づいたエピソード一つ一つが説得力を持つ。

戦後、ユニセフから粉ミルクの配給を受けて復興を遂げた日本。高度成長を終えたころの70年代に生まれた筆者ではあるが、あらためて「恩返し」の必要性を痛感した。

ゲスト / Guest

  • アン・ベネマン / Ann Margaret Veneman

    ユニセフ事務局長 / Executive Director of UNICEF

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