2006年04月05日 00:00 〜 00:00
アルベルト・ロムロ・フィリピン外相

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会見リポート

甥に継承される基本外交

鈴木 孝信 (個人会員(日本経済新聞出身))

先行する韓国、シンガポール、タイ、マレーシアに続き中国、インドの人口大国も経済大国への道を歩みはじめ順調に発展するアジア。緒方貞子氏はJICA理事長就任直後、当クラブでの記者会見で今後は活動領域をアジアからアフリカへシフトさせていく可能性に言及した。

たしかにサハラ以南の絶対的貧困が最大の国際問題の一つであることは疑いない。しかしアジアにもラオス、カンボジア、ミャンマー、バングラデシュなど貧困に苦しむ国は多く、またフィリピンもインドネシアと共に一人当たり国民所得が1千 ドル前後で低迷を続けている。

それだけに、アルベルト・ロムロ外相のオープニング・ステートメントは日本の対比直接投資だけでなく経済協力にも強い期待をにじませた内容だった。

しかし、それ以上に印象的だったのは質疑を通じて明らかにされた地域協力機構の役割とその場における大国(特に日中両国)の協調に寄せる期待の大きさである。

実は、私は1969年にマニラのマラカニヤン宮殿で当時のカルロス・ロムロ外相にインタビューしたことがある(アルベルト・ロムロ現外相はその甥にあたる)。その時、同外相は「東アジアの安定には日米中ソの4大国による安全保障の枠組みが不可欠だ」と語ったのである。

時あたかもベトナム戦争の真っ最中。名だたる反共国家の外相の予想外の発言に一瞬、ヒアリングの間違いではないかと思ったほどだった。

それから約40年、ロムロからロムロへ。「大国間の地域的な協調があってこそ、はじめて自国の安全と発展が確保される」というフィリピン外交の基本的な思考は脈々と受け継がれているようだった。

ゲスト / Guest

  • アルベルト・ロムロ / Alberto G. Romulo

    フィリピン共和国 / Republic of the Philippines

    フィリピン外相 / Foreign Minister

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