会見リポート
2006年03月15日
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西修・駒澤大学教授「憲法」9
会見詳録
会見リポート
“改憲”を国際比較の視点で
野嶋 剛 (朝日新聞論説委員室兼政治部)
どこにでもいる観念的な改憲論の学者とはひと味違う。西教授の武器は徹底的な「比較」である。
研究会で配られた資料に驚いた。米国は18回の改正、フランスも18回、イタリアは14回、「世界最大の民主主義国」のインドに至っては91回、日本が「戦後」のお手本としてきたドイツも51回の改正を経験している。スイスに至っては1874年の施行以来、毎年のように140回の改正をしたという。
また、憲法の条文に「平和主義」の条項があるかないかを世界193カ国の憲法から調べ上げ、一項目でも平和条項の規定がある憲法を持つ国は150カ国に達すると突き止めた。
研究会では参加者から「小さな国の憲法と経済大国の日本の憲法を比較しても意味があるのか」という質問が上がった。しかし、比較研究とは徹底するから意味がある。「日本の憲法は世界で古い方から14番目。日本以外はかなり頻繁に改憲している。60年近く無改正は日本だけなんです」。西教授のこうした主張が説得力を伴って響くのも、その背後に膨大な作業があるからだ。
西教授の本音は憲法にまつわるさまざまな「神話」を破壊したいのだと思う。憲法は変えない、平和主義は日本が世界に誇るべき思想だ、国防の義務や兵役は課してはいけない……。
戦後の日本で通用した言説が実のところ、世界の常識とはかい離していることをデータから説き、「改憲をタブー視すると思考停止状態に陥る」と警鐘を鳴らした。
憲法改正に対し、政界は自公民の主要3党は基本的には前向きだ。どのメディアも数年内には改憲論議に本格的に巻き込まれる。我々が世界の状況を知るうえで西教授の研究は間違いなく重みを増すだろう。
ゲスト / Guest
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西修 / Osamu Nishi
駒澤大学教授 / Professor, Komazawa University
研究テーマ:憲法
研究会回数:9