2006年03月27日 00:00 〜 00:00
畔蒜泰助・東京財団リサーチフェロー/田中浩一郎・日本エネルギー経済研究所中東研究センター長「中東ベーシック」14

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会見リポート

イラン核問題の深層

岐部 秀光 (日本経済新聞国際部)

イラン核開発問題をめぐる同国や米国の真意は政治家たちの表面的な発言だけでは理解できない。背景にある中ロなど関係国の思惑や周辺中東情勢、同様に核問題が焦点である北朝鮮の動きなどから深層を探る必要がある。二人の話は複雑さを増す国際政治を報道することの難しさをあらためて印象づける内容だった。

田中氏は「イスラエル抹消発言をはじめとするアハマディネジャド大統領の過激発言はイランの核政策と直接結びついてはいない」と言う。核政策を動かしているのは大統領でなく安全保障政策の責任者であるラリジャニ氏らで「計画は極めて冷静に進められている」との分析だ。

畔蒜氏はイラン核問題でロシアが仲介役を果たしている背景として、米ロ主導による核燃料の国際管理構想があると言う。「9・11事件で国際テロと大量破壊兵器拡散という、冷戦時代と異なる次元の脅威が浮上し、米ロが戦略的な協力関係を進めている」と解説する。将来のエネルギー問題解決の観点から「米政府もイランの原発利用を遅ればせながら認める立場だ」。

イランは最近、イラク問題で米国との協議を公に提案した。核問題での時間稼ぎとの見方もあるが「隣国イラクにどんな政権ができるかはイランの安全保障に直結する問題で、イランの本当の狙いは実はイラク問題ではないか」という畔蒜の氏の指摘は新鮮だ。田中氏は「イランはアフガン、イラク戦争で秘密裏に対米協力したが、これを公にしなかったことを悔やんでいる」と解説する。

イラン問題では米国発の報道も時に政治色を帯びる。日本にとっても切実な問題だけに表面的な言葉の応酬に惑わされないことが重要だ。

ゲスト / Guest

  • 畔蒜泰助 / Taisuke Abiru

    東京財団リサーチフェロー / Research Fellow, The Tokyo Foundation

  • 田中浩一郎 / Kouichiro Tanaka

    日本エネルギー経済研究所中東研究センター長 / Chairman, JIME Center, The Insititute of Energy Economics, Japan

研究テーマ:中東ベーシック

研究会回数:14

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