2006年03月28日 00:00 〜 00:00
ミエーゴムビン・エンフボルド・モンゴル首相

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会見リポート

“草原の民”のパワー

西島 大美 (読売新聞編集局部長(文化関連事業担当))

朝青龍が16度目の優勝を飾り、三賞をモンゴル力士が独占。春場所はモンゴルの風に席巻された。

「友好的空気は強まっている。力士を何人でも送り出す用意がある」との言葉は自信に満ちていた。

堂々たる体躯と力のこもった眼に、チンギスハンの幕営にでもいそう──などと連想したのは筆者だけか。史上最大の帝国が誕生して、今年は800年。騎馬軍団の再現などの催しやビザ免除を用意して、日本人の来訪を待っていると訴えた。

米国CIAの報告によると、同国04年のGDP実質成長率は10・6%とすばらしい。しかし同時に、数千年の歴史をもつ遊牧の国は、経験のない難問を突きつけられてもいる。

遊牧に破たんした牧民の流入による都市肥大、貧富の差の拡大などだ。筆者も、4年おいた2度の訪問で、経済の活性化とともに貧困層の拡大を実感させられた。「モンゴル国にあった開発計画を進めているが、進んでいない」と、首相が日本の援助を期待するのはうなずける。

モンゴルをこよなく愛した司馬遼太郎は生前、「くるたびにこの国は生きのびられるか、と自問自答する」(「草原の記」)と案じた。モンゴルの人に親近感を持ち、草原の暮らしにある種の豊かさを感じる日本人は少なくないだろう。

急速な商品経済の浸透は、草原の暮らしの本質を変えるパワーもはらんでおり、温暖化現象は砂漠化を進める。大転換期のかじ取りは容易ではない。国民の7割が「日本に好感」という国はほかにないだろう。モンゴル旋風を機に、草原の民の将来にも思いをはせてはどうだろうか。

ゲスト / Guest

  • ミエーゴムビン・エンフボルド / Enkhbold Miyegombo

    モンゴル国 / Mongolia

    モンゴル首相 / Prime Minister

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