2006年02月06日 00:00 〜 00:00
清水真人・日本経済新聞経済解説部編集委員

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会見リポート

政策決定メカニズムの変化

岸井 成格 (毎日新聞特別編集委員)

小泉純一郎首相の「強さ」の秘密は何か──その回答の一つが著書のタイトルでもある「官邸主導」にある。この10数年間の、“政策決定メカニズム” の変化を、豊富な取材と明確な分析によって描き出すことに成功している。

ズバリ結論は、「権力」が政党、派閥、族議員、官僚から、徐々に、しかし劇的に首相官邸に移ったということだろう。

著者の話も説得力のあるものだったが、「本当にそうだろうか」「仮にそうだったとしても、ポスト小泉以降は逆戻りするのではないか」などの疑念の声も聞かれた。

私はほとんど同感だったが、やはり多くの人に納得してもらうまでには至っていない。9月に退陣であれば、佐藤栄作、吉田茂両首相に次いで5年半の長期政権を誇ることになる。“大勲位”と、「変人」「一匹オオカミ」では、イメージにギャップがあり過ぎるのかもしれない。

それでも小選挙区制の導入を軸とする政治改革の進展によって、派閥や族議員の力は信じがたいスピードで凋落し、党、官僚の政策決定権が首相官邸に奪われてきた。

キーワードは、小泉首相が陣笠時代から執着してきた「権力の行使」(解散権と人事権)に尽きる。

著者は政策決定権の変化を追うことで、そのことを浮き彫りにした。

私であれば、ドロドロとした権力闘争にスポットライトをあてたかもしれない。まずは実力者、野中広務元幹事長との凄絶な闘いであり、その延長線上に最大派閥「旧経世会」支配を崩す野望があった。

そして中曽根康弘、宮沢喜一、橋本龍太郎各首相を政界引退に追い込んだ。その集大成が「郵政解散」だったと見て間違いない。

アプローチはさまざまあるが、おそらく同じ結論に導かれるだろう。歴史の評価はまた別である。

ゲスト / Guest

  • 清水真人 / Shimizu Masato

    日本 / Japan

    日本経済新聞経済解説部編集委員 / NIKKEI

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