2006年02月08日 00:00 〜 00:00
黒田東彦・アジア開発銀行総裁

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会見リポート

単一の東アジアFTAを提唱

野坂 雅一 (読売新聞経済部次長)

昨年2月にアジア開発銀行(ADB、本部・マニラ)の総裁に就任してから1年が経過した。アジア各地や欧米などを飛び回る多忙な日々の合間に来日し、会見していただいた。アジアの地域協力や経済統合の役割に関する大胆な発言は印象的だった。

「アジアに存在する多数の自由貿易協定(FTA)を単一の東アジアFTAに統合していくことが重要課題だ」「東アジアは北米のNAFTA型の浅い統合より、ヨーロッパ型の奥行きの深い経済統合を目指すべきで、その方向に向かっていくだろう」

財務省の国際金融畑を歩み、財務官当時は通貨マフィアとして活躍し、内閣官房参与なども務めた論客で知られる。しかし、従来以上に明快な言いぶりには、アジアが繁栄する道を提案していく自負がうかがえた。

アメリカ、中国、韓国などがFTA推進に力を入れているが、日本のFTA戦略はやや後手を踏んでいる。総裁は「貧困なきアジア地域を実現するためには、地域統合が重要な手段になる。開かれた地域主義の方向は間違いない。地域が協調し、統合が進むと、経済成長が促進され、投資を呼び込む。新たな経済的機会が創出される」と述べた。

「政冷経熱」の日中関係や、FTA交渉が中断している日韓関係を考えると、前途は多難かもしれない。だが、「単一の東アジアFTA」提唱は強烈なメッセージになった。

ADBが指標として開発中の通貨単位(ACU=アキュ)についても、「アキュを出す時期は明確に言えないが、将来の共通通貨の素地になり得る」と断言し、注目を集めた。

昼食会翌日にはアメリカに向かった。アジアの経済発展を目指し、チャレンジする姿勢が続きそうだ。

ゲスト / Guest

  • 黒田東彦 / Haruhiko Kuroda

    アジア開発銀行総裁 / The Governor of Asian Development Bank

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