2006年02月22日 00:00 〜 00:00
橋本元一・NHK会長

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会見リポート

デジタル時代の公共性を追求

宮下 博 (読売新聞文化部)

NHKは今、各界を巻き込んだ改革議論の渦中にある。放送業界全体も放送と通信の融合をめぐり、大きく揺れる。そんな中で登場した当事者のトップは、公共放送の使命や今後の在り方を中心に持論を展開した。

まず橋本会長は、一連の不祥事に対する批判から急増した受信料の不払い件数が、このところ減少に転じ、落ち着いてきた状況を強調。「できるだけ早い信頼回復、財政安定に向け、努力を続けたい」と語った。

その具体的な方策が1月24日に発表された、新年度からの「3か年経営計画」だ。NHK自身の改革と、デジタル時代への対応を2本柱に、様々な施策を打ち出した。橋本会長は「社会的変化に合わせ自分たちから脱皮していくことが必要な一方、変えてはいけない部分もある」と主張し、それが「NHKの公共性や視聴者第一主義、自主・自立のジャーナリズム精神だ」と述べた。

これらを踏まえ、デジタル時代の公共放送に求められる要素を4つ提示。①信頼される情報の提供②人々が物事を考える際の共通基盤の形成③情報格差の是正と情報弱者の支援④日本固有の風土・文化の維持・継承──が大切だとした。

現在の放送改革論議は、市場原理の導入や著作権問題の解消など、経済界ペースで進みがちで、ビジネス環境整備のみが先走っている感がある。これに対して橋本会長は、「日本文化の基調には多様性があり、公共放送も複雑で有機的なつながりを持つ点に意義がある。単純に経済合理性だけで考えるのは忍びない」と疑問を呈し、和辻哲郎の思想にも言及して反論したのが興味深かった。

会場との質疑応答では、国際放送への広告導入や放送技術研究所の民営化など、直近の焦点も取り上げられ、時宜にかなったゲストとなった。

ゲスト / Guest

  • 橋本元一 / Genichi Hashimoto

    NHK会長 / President of NHK

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