2006年02月07日 00:00 〜 00:00
草野厚・慶応大学教授

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会見リポート

国際協力銀行存続論を一刀両断

宮智 宗七 (個人会員(日経出身))

政府開発援助一元化の議論が煮詰まってきている中で、草野教授による国際協力銀行(JBIC)存続論への厳しい批判は「一刀両断」の印象の強い歯切れのよさを示していた。

政府系金融機関の民営化・統合の最後の課題だけに、議論は生臭くなって妥協案や先送り型の議論になりやすい。草野氏は、主に3つの観点からその解体論を激しく展開した。

主張の第一は、輸銀と基金が統合されたJBICそのものには、政府の特殊法人改革の趣旨から考えてリストラ効果はなく、2つの組織が見かけだけ一緒になってまったく別の仕事をしているだけだ。第二に、先進国やOECDの基準を見てもODA貸付(円借款)と輸出信用は明白に分離している。日本の現状は途上国型だ。第三に、日本の現状は「透明性の維持・確保」という政策遂行上きわめて重要な原則をも損なっている、などの多角的な指摘であった。

草野氏自身は外務省のODA戦略会議のメンバーであるとともに、内閣官房長官の下に設けられた「海外経済協力に関する検討会」のヒアリングにも応じるという具合に、いわば「渦中の人」である。それだけに、JBIC内部や財務省の水面下の動きや、公表資料の一見わかりにくい危うさ(つまり、引っかかりやすいゴマカシ部分?という意味)の具体的な指摘なども注目された。さらに、マスメディアが一部のニュースソースに振り回されているとして「勉強不足」を指摘する場面もあり、内容は盛りだくさんであった。

私個人の関心は、草野氏が強調する「財務省の執拗なまでの存続への努力」がなぜ続いているのか、という点にあったが、草野氏の答えは私にとって納得できるものだった。配布された「JBIC保有不動産」の表を含む資料の充実ぶりと合わせて、レクのテーマに一層強い関心を持つことにはなった。

ゲスト / Guest

  • 草野厚 / Atushi Kusano

    日本 / Japan

    慶応大学教授

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