2006年02月01日 00:00 〜 00:00
高山勇一・現代文化研究所中国研究室長「中国経済」7

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会見リポート

世界第3位の中国自動車市場

新貝 憲弘 (東京新聞外報部)

中国の自動車販売は昨年で572万台と世界第3位。今年は日本を抜き米国に次ぐ世界2番目の市場となることが確実視されている。高山氏は世界の自動車産業に精通しており、その客観的な分析はこれから現地で取材する立場の私には深い示唆を与えるものだった。

中国の沿岸部ではマイカーが普及してきたが、その一因として高山氏は、民族系メーカーが小型車市場に参入してきた点を指摘する。3年前まで市場の1割に満たなかったシェアは、昨年ほぼ4分の1を占めるようになり、排気量1000cc前後では外資系を圧倒している。

一方、外資系は合弁形態でなければ生産できないため、以前はいち早く進出した独フォルクスワーゲンの独壇場だった。しかし2000年以降、米ゼネラル・モーターズやホンダが台頭、韓国の現代自動車やトヨタ自動車も本腰を入れ始めており、世界の主要メーカーが集まる主戦場となっている。

ただ高山氏は「品質基準の違いで外資は民族系との価格差を埋められない」と指摘、外資系の高級車と民族系の大衆車という市場の二極化が当面続くと見る。多くの消費者は品質が劣っても安いものを求めるためで、この“ダブルスタンダード”はかつて存在した外国人用の外貨兌換券と中国人用の人民元を彷彿させる。このため2010年初頭には1000万台市場まで成長するだろうとしながら「外資が戦える余地は限られている」との見方は興味深かった。

課題はエネルギーと環境問題だ。中国政府も燃料電池車など環境技術の開発に力を入れるが、高山氏は「先進技術を取り入れる受け皿が中国企業にはない」と手厳しい。先進国のコピーで発展したと揶揄された中国産業も、本当の実力が問われる段階にきたようだ。

ゲスト / Guest

  • 高山勇一 / Yuichi Takayama

    日本 / Japan

    現代文化研究所中国研究室長 / Advanced Studies Research Organization

研究テーマ:中国経済

研究会回数:7

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