2005年12月06日 00:00 〜 00:00
イブラヒム・ジャファリ・イラク移行政府首相

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会見リポート

総選挙直前の来日

及川 仁 (共同通信外信部)

イラク戦争によるフセイン政権崩壊後、イラク人による初めての正統政府を樹立するイラク総選挙を翌週に控えた時期に訪日した。

「武装勢力の活動は年初に比べて鎮静化している」「電力についても整備が進み、以前ほど大きな問題ではなくなってきた」。会見で首相は、日本がイラク安定化のプロセスを支援してきたことに感謝するとともに、イラクの治安の安定と復興の進展を強調した。サマワで活動する陸上自衛隊の駐留延長、復興支援への一層の関与を要請するために訪日した立場からの発言であることは理解できるが、現状は厳しい。

米ブルッキングズ研究所がウェブサイト上で公表している資料によれば、イラク全土での自動車爆弾によるテロは、昨年7|11月まで月間68|83件の間を推移しており、月間130件以上だった昨年4、5月のレベルからは減少したものの、私が1年間駐在したイラクを離れた一昨年8月よりもなお3、4倍の発生件数。昨年11月の電力供給時間は全土で1日13・8時間、これも一昨年8月とほぼ変わらないレベルだ。

多国籍軍撤退時期について「撤退しても平和や安定が続くという保証がなければならない」と述べたのも、イラク軍や警察の訓練が当初の計画通り進んでおらず、逆にこれら治安部隊を狙った武装勢力の攻撃が後を絶たないという現実を踏まえたものだろう。

国民が最も期待した治安の安定を移行政府は達成できず、総選挙では現在議会で単独過半数を占める与党会派「統一イラク同盟」が議席を減らすのは避けられない見通し。「同盟」内でも次期首相として別の実力者の名が取りざたされ始めており、ジャファリ氏は厳しい局面に立たされている。

ゲスト / Guest

  • イブラヒム・ジャファリ / Ibrahim al-Jaafari

    イラン / Iran

    イラク移行政府首相 / Prime Minister, Iraqi Transitional Government

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