2005年11月25日 00:00 〜 00:00
根岸昌功・都立駒込病院感染症科部長「HIV/エイズ」22

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会見リポート

エイズ診療20年の現場報告

宮田 一雄 (産経新聞論説委員兼編集委員)

駒込病院は1985年にエイズ外来を開設して以来、20年にわたってエイズ診療と取り組んできた。その85年から昨年末までに診療を受けたHIV感染者・エイズ患者は1488人で、このうち214人が亡くなっている。

エイズ診療20年の経験を踏まえた根岸さんの話は後半の10年が中心になった。年間の死者は1996年の29人が最も多く、以後は減少している。96年ごろから3種類以上の治療薬を用いた多剤併用療法が普及し、完治はしないものの、体内にエイズの病原ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)を抱えて長く生きていくことは可能になったからだ。

96年の死者の多くは、治療の進歩がわずかな時間差で病気の進行に追いつかなかったことになる。

駒込病院では現在、4人の医師が約800人のHIV陽性の患者の診療にあたっている。患者は年々、増え、受け入れはもう限界に達しつつあるという。

また、死者が減ったとはいえ、昨年は8人、一昨年は15人が死亡している。エイズを発症するまでHIV感染に気づかず、治療が手遅れになるケースが少なくないからだ。

一方で、駒込病院の患者のうち、保健所でHIVの抗体検査(エイズ検査)を受けて感染を知った人は一割にも満たない。感染を早期に発見し、エイズの発症前に治療を始めて長期の生存を可能にするという現在の治療戦略の中で、保健所の検査は有効に機能しているのだろうか。

日本は非常に恵まれた条件があるのに、その条件を生かすことができず、治療も検査も大きな課題を抱えている。エイズ診療の現場からの報告で、それがよく分かった。



ゲスト / Guest

  • 根岸昌功 / Masayoshi Negishi

    都立駒込病院感染症科部長 / General Manager, Infectious Diseases of Komagome Hospital

研究テーマ:HIV/エイズ

研究会回数:22

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