2005年11月25日 00:00 〜 00:00
ホシャル・マフムード・ジバリ・イラク移行政府外相

申し込み締め切り

会見リポート

政治プロセス進展への自負

脇 祐三 (日本経済新聞編集局次長兼国際部長)

イラク戦争後、2003年秋に創設された統治評議会以来、新たな国づくりを目指すイラクで、一貫して外相を務めてきたのがこの人だ。頭の回転が速い。内輪の席での舌鋒は鋭く、公式の場では外交的配慮を欠かさない。初の来日で臨んだ今回の記者会見では日本への感謝を強調し、「自衛隊の駐留継続を望む」「ビジネスでは日本の優先順位を高くし、協力へのお返しをしたい」とも語った。

外相はクルドの有力ファミリーに生まれ、サダム・フセイン政権時代に兄弟のうち二人が暗殺された。イラン・イラク戦争中には、イラク軍が国内のクルド人の町ハラブジャを化学兵器で攻撃する惨劇も起きた。「サダムの政権打倒は人道的観点から言っても戦争の正当な理由になる」「米国の役割についての論議もあったが、多くのイラク国民の視点から見れば大義は存在した」。米国が始めた戦争に大義はあるのかとの質問には、冷静さを保ちつつ、たたみかけるように答えていた。

冒頭の声明では「すべてがバラ色と思うのは非現実的」と断りながらも、政治プロセス進展に注目するよう訴えた。「1月の暫定国民議会選挙には800万人が、10月の憲法承認国民投票には1000万人近くが参加した。12月の国民議会選挙への参加者はさらに増える」。外相は「民主化は米英などから押しつけられたのではなく、多大な犠牲を払ったうえでの内部からの動き」と説き、新憲法に基づく政治体制構築はイラク国民の自己責任だと力を込めた。スンニ派も含めた国内融和は大きな課題として残るが、民主化は国民共通の願望という強い自負を感じさせる会見だった。



ゲスト / Guest

  • ホシャル・マフムード・ジバリ

    イラク移行政府外相

ページのTOPへ