2005年11月07日 00:00 〜 00:00
ヨルマ・ユリーン・駐日フィンランド大使

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会見リポート

高福祉で「国民の一体感」

北村 節子 (読売新聞調査研究本部主任研究員)

「世界競争力、3年連続でナンバーワン(WEF)」「学習到達度(読解、数学、科学)世界一(PISA)」─ここ数年、フィンランドは国際社会で存在感を強めている。新任大使の講演タイトルも「フィンランドの成功の鍵」と、自信にあふれたものだ。

OECD業務経験豊富な通商通とあって、次々に数字を挙げながら5つの「鍵」を説明した。第1は、大学レベルまで無料の教育など、徹底した「機会平等」。国民を知的資産としてフル動員する構えだ。第2には「技術開発への絶え間ない投資」。大学・企業間の交流促進など、R&Dへの熱意を語る。第3に挙げたのは「健全な規制枠組みと効率的公共サービス」。80年代に果たした郵政民営化など、効率的な民活推進を強調した。4番目は「オープン・エコノミー」。GDPの40%近くを輸出で得ている実績をふまえて、外国市場、資本への積極的なアクセスの必要性を説く。

こうした「自由競争化」色の強い項目の後、第5として挙げたのが「新しい福祉国家像」。競争力強化とGDPの44%を費やす高福祉の両立には改善が必要と指摘、公務員経費の削減、二度にわたる年金改革を紹介したが、「それでも、高福祉のもたらす国民の一体感こそ人材育成につながる」と締めくくった。

日本とは「〝中国現象〟に対応を迫られる立場として、また急激な高齢化を迎えている点で共通」している、とし、「競争はよりタフさを増すだろう」と予想。その上で大きな手のひらを組み慎重に言葉を選びながら「(ソビエトの圧政に耐えた歴史に触れ)我々は大きな競争にも勝ってきましたのでね」とにやり。

世界が「より小さな政府」に走る流れの中、独自のモデル構築に自信を見せていた。

ゲスト / Guest

  • ヨルマ・ユリーン / Jorma Julin

    フィンランド / Finland

    駐日フィンランド大使 / Ambassador to Japan

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