2005年10月14日 00:00 〜 00:00
中貝宗治・兵庫県豊岡市長「被災地から」3

申し込み締め切り

会見リポート

危機管理はトップの責任

桜間 裕章 (神戸新聞東京支社編集部長)

堤防決壊を市民にどういう言葉で伝えるのが適切なのか。防災行政無線のマニュアルはなく、議論しているうちに時間が過ぎた」。昨年10月の台風23号で7人が亡くなり、市街地の大半が水没するなどの被害を受けた豊岡市。中貝市長は、その教訓を伝えようと、「できなかったこと」も含めて率直に経験を語った。

例えば、ごみ処理だけでも7カ月かかった。災害時でも分別収集をすれば早く処理できるが、「そうしたノウハウが知られていない」と話す。水に漬かった冷蔵庫が大量に廃棄され処理に追われた。しかし、乾かせば使えるものが多かったのだという。「災害対応のさまざまなノウハウを自治体が共有することが大切だ」と訴えた。

また、三つの備えが必要と述べた。一つは、堤防整備や森林の保全などの物理的備え。二つ目は、復旧・復興までの体系的法制度の整備、生活再建支援制度の充実などの制度的備え。三つ目が、地域の自然の特徴を知る、リアリズムに徹した訓練、政策責任者の危機管理研修などの意識・態度の備えという。「危機管理は自治体トップの最大の仕事のはずだが、首長は災害の危機管理を知らない」とも述べた。

こんなエピソードも紹介した。浸水で自宅に取り残された市民が「孤立したが、孤独ではなかった」と語った。近所の人が食料と水を届けてくれたからだという。「人と人とのきずなこそが人間を救う」。被害は大きかったが、学んだことは多い。

近年、大災害が相次ぐ。中貝市長は被災自治体に呼びかけ、課題や提言をまとめたいという。災害の教訓をどう伝えていくか。メディアの役割が大きいこともあらためて感じた。

ゲスト / Guest

  • 中貝宗治 / Muneharu Nakagai

    日本 / Japan

    兵庫県豊岡市長 / Mayor of Toyokoka, Hyogo Prefecture

研究テーマ:被災地から

研究会回数:3

前へ 2024年03月 次へ
25
26
27
28
29
2
3
4
5
9
10
11
12
16
17
20
23
24
30
31
1
2
3
4
5
6
ページのTOPへ