2005年10月12日 00:00 〜 00:00
岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長「インフルエンザ」

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会見リポート

新型ウイルス出現阻止は不可能

前野 一雄 (読売新聞医療情報部長)

毎年、カレンダーの残り枚数が少なくなってくるとインフルエンザの流行が心配される。でも近年、国内外の関係機関が危機感を強めているのは、新型インフルエンザの出現が迫っているからだ。スペインかぜ(1918年)、アジアかぜ(1957年)、香港かぜ(1968年)と、10~40年周期で大変異を遂げる新型ウイルスは、性質を一変させるため、既存のワクチンが効かない。

「出現阻止は不可能。大流行に向けて導火線に火がついた状態であり、健康被害を最小限に抑えるかは事前準備にかかる」と、わが国の感染症監視役の総元締として警鐘を鳴らす。

実際、その原型と見られる鳥インフルエンザがベトナム、タイ、インドネシアなどで高い致死率を示し、国内の養鶏場でも大規模な封じ込め対策が強いられている。

目下のところ、鳥からの感染だが、今後、人から人への感染経路が現実化したら……。蒸気船時代のスペインかぜの時は4~11カ月かけて世界を席巻、死者は4、5000万人にのぼった。現代はわずか数日間で世界に伝搬。地球規模で大流行が同時多発し、最悪のシナリオでは死者5億人との推定もあるほどだ。

「国際的な監視態勢の充実とともに、対策は『ボヤ』ではなく『大火事』に備えなければ意味はない」と、解決すべき諸問題を挙げる。

新型ウイルスを迎え撃つには情報伝達の的確さが欠かせない。 メディアの力を重視するが、 いたずらに大騒ぎする不勉強ぶりにも不満を隠さない。このため、「正しく伝えてもらう努力をしなければならない」 と毎月最終の月曜夜、 メディア向けの勉強会を開催している。 センター庶務課に申し込めば、 だれでも参加できる。

ゲスト / Guest

  • 岡部信彦  / Nobuhiko OKABE

    日本 / Japan

    国立感染症研究所感染症情報センター長 / Head,IDSC

研究テーマ:インフルエンザ

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