2005年10月25日 00:00 〜 00:00
朴重彦・ハンギョレ新聞東京支局長「韓国の新聞法」2

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会見リポート

三大紙規制し言論改革を

桜井 泉 (朝日新聞外報部)

ハンギョレ新聞は、88年5月に創刊された。ハンギョレとは「一つの民族」という意味。朴正熙政権の言論弾圧で東亜日報、朝鮮日報などを追われた記者たちがつくった。国民から株を募集し、民主的な経営で知られる。創刊当時から90年代半ばまでは大学生らを中心に飛ぶように売れた。それが今、インターネット新聞の時代になって苦戦している。

ハンギョレの論調は、進歩的であり、盧武鉉政権の立場に近い。しかし朴さんは、「親政府」といったレッテル張りをしないでほしいという。北朝鮮政策では政権を支持し、イラク派兵には反対するなど是々非々の立場をとっているからだ。

朴さんは当然ながら、朝中東(朝鮮、中央、東亜日報)と呼ばれる三大紙を規制することに賛成だ。なぜなら歪曲した報道で国民の民主化要求を弾圧してきたからだという。例えば、金泳三政権時代、軍事独裁の残滓である非民主的な制度や法律を擁護した。慶尚道と全羅道という地域感情を刺激し、政策に関する国民の理性的判断をにぶらせた。あるいは、新聞社のオーナー家が経営のみならず、編集方針や人事まで握る。ある新聞社が、大統領選挙で特定候補に資金提供した疑惑も出ている。

いずれも正論で、言論改革の必要も感じられる。ただ、どうしても理解できないのは、政府が改革と称して法律によって新聞を規制することだ。次の大統領選挙で保守政権が生まれたらどうなるのだろうか。再び、法律が変えられ、ハンギョレが弾圧されるおそれはないのか。新聞を選ぶのはあくまでも読者でなければならない。独裁政権と激しく戦ってきた韓国の言論人は、権力の危険性を最もよく知っているはずなのだが。


ゲスト / Guest

  • 朴重彦 / Park Jungeon

    ハンギョレ新聞東京支局長 / Tokyo Bureau Chief, The Hankyoreh

研究テーマ:韓国の新聞法

研究会回数:2

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