2005年08月17日 00:00 〜 00:00
倉田秀也・杏林大学教授「北朝鮮」15

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会見リポート

6者協議2つのジレンマ

笹島 雅彦 (読売新聞調査研究本部研究員)

北朝鮮はなぜ、核開発を進めるのだろう。ぎりぎりの危機状況を作り出し、対米交渉で譲歩を引き出すいわゆる「瀬戸際外交」のための手段なのだろうか。

倉田教授はこうした見方を否定する。「もともと核開発は米国に対するカードではない。それ自体が目的なのであって、バレてしまったから、それが手段になっている」というのが、基本的持論。情報の絶対量が乏しい北朝鮮の安全保障問題を扱いながら、そのち密な分析は一貫してぶれることがない。気鋭の国際政治学者である。

今回の研究会では、合意文書の草案をめぐって調整が難航し、休会に入った第4回6者協議をどう見るか、中間評価を聞いた。

倉田教授はまず、6者協議を「地域的集団安保協議」と位置づけた上で、「二つのジレンマを抱え込んでいる」と指摘する。一つは、協議が長引き、時間がたてば、北朝鮮の核開発は進むということ。もう一つは、中露を含めた集団的圧力には限界があり、米国の行動をかえって拘束、米国の当初の期待を裏切る状況になっているということだ。

北朝鮮が94年に国際原子力機関(IAEA)を脱退して以降、核施設に査察官が入るという「保障措置の継続性」が断絶した。

国連安保理はその報告を受けたのに一度も討議を行っていない。「本来、国連安保理で協議すべきことを今、6者協議で行っている」という指摘は、問題の原点を思い起こさせてくれた。

協議の焦点は、「非核化」の定義で、「平和利用」としてのウラン濃縮計画をどう取り扱うか、新たな「取引」が行われる可能性があるという。「取引」が成立する時点で、もう一度、分析を聞いてみたい。

ゲスト / Guest

  • 倉田秀也 / Hideya Kurada

    日本 / Japan

    杏林大学教授 / Professor, Kyorin University

研究テーマ:北朝鮮

研究会回数:15

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