2005年07月20日 00:00 〜 00:00
渡辺博史・財務省財務官「中国経済」3

申し込み締め切り

会見リポート

ぴったりだったタイミング  

金子 秀敏 (毎日新聞論説副委員長)

これほどタイミングのいい研究会も珍しかった。なにしろ「人民元の明日、 その後」 について、渡辺財務官の歯切れよい解説を聞いた次の日の夜、人民元の切り上げが発表されたのである。

わが編集局は一面トップから紙面を作り替えるので大騒ぎになった。社説も経済部出身の論説委員を呼び出して、遅版から差し替えた。だが、どこか余裕を持てたのは、研究会で頭の中を整理していたおかげだろう。各紙の解説にも、研究会での話が引用されていた。

会の始まる前から10階ホールの席はかなり埋まっていた。人民元への関心の高さにあらためて驚いた。単に経済的な関心には止まらない。4月の反日デモに衝撃を受けた日本人の多くは、あまりにも急速に台頭する中国に危うさも感じていた。まさに中国の「明日、その後」を占う指標として人民元が注目されたのだろう。

財務官のポイントもそこにあった。貧富の格差、汚職腐敗、電力や石油などエネルギーのネックを抱える中国にとって、大切なのは成長の速度を競うことではなく、いかにして持続的な成長を維持していくかだ。それには今の成長を7~8%に抑えなければならない。今後の人民元再切り上げも、それにかかっている。

香港紙によると、香港人が中国内地に持っている不動産の件数が今年上半期6%増えた。元の切り上げと不動産価格の値上がりの一石二鳥を狙って財産をつぎ込んだ香港人の顔が浮かんでくるようだ。

投機的なホットマネーの挑戦にさらされている中国政府の苦境も理解できる。昨年増えた外貨1000億ドルのうち約400億ドルが得体の知れない資金だというから、今回2%と小幅だったのは、通貨危機を起こさないよう慎重だったのだろう。

ゲスト / Guest

  • 渡辺博史 / Hiroshi Watanabe

    財務省財務官 / Vice Minister of Finance for International Affairs

研究テーマ:中国経済

研究会回数:3

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