2005年07月05日 00:00 〜 00:00
呉軍華・日本総研上海事務所長「中国経済」1

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会見リポート

「投入依存経済」の軟着陸は?  

後藤 卓彦 (日本経済新聞アジア部次長)

「今の中国は『有法無天』。『無法無天』よりたちが悪い」。「無法無天」は、中国語で法も道理もない世界のこと。法はあっても権力者がそれを恣意的に運用し権力を乱用する現状を批判しての言葉だ。

歯に衣着せぬ弁舌の一方で、「共産党には野党の圧力はないが、政権を維持しなければならないというプレッシャーはある」として、現中国指導部の体制崩壊回避に向けた努力も評価した、冷静な分析だった。

今回のテーマは「ソフトランディング」。「歴史上、もっとも超大国に近い位置」にありながらも、「ある意味では文革時よりも体制崩壊のリスクが高い」中国の政治・経済体制変革をいかに着地させるかであり、中国ウオッチャーの間ではもっともホットで、本質的なテーマでもある。

興味深いのは、江沢民時代の中でも後期の1998年から02年の政策が現状を分析する上で重要と指摘した点である。この期間の経済成長を外生的成長(=外資と財政に依存した投入主導成長)都市部の開発偏重─と位置づけている。「資本・労働力の投入に依存して、生産性向上を伴わないアジア経済の成長はいずれ限界に直面する」とのP・クルーグマン教授の予言が現実になったと騒がれた97~98年のアジア経済危機の後に、むしろ中国経済は投入依存型になったわけだ。これによって通貨危機を乗り越えたものの、急速に膨らんだ開発利権の蜜に群がる動きが広がり、貧富格差など社会の矛盾は拡大。最近の暴動多発にみられるように「社会の緊張、対立の先鋭化」につながっているという。

「2012年までは今の体制は持つ。それ以降は『わからない』」という呉氏。あえて極論に傾かず、謙虚に正反対の2つのシナリオを見つめていこうという姿勢は、一段と二極分化しつつある最近の中国論においては貴重である。

ゲスト / Guest

  • 呉軍華 / Wu Junhua

    日本総研上海事務所長 / Director of Shanghai Office, The Japan Research Institute, Limited

研究テーマ:中国経済

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