2005年06月17日 00:00 〜 00:00
内藤正典・一橋大学大学院教授「中東ベーシック」6

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会見詳録


会見リポート

欧米の「イスラム嫌い」の背景  

百瀬 和元 (個人会員(朝日新聞出身))

病的な恐怖心や嫌悪感を表す言葉「フォビア」をもじって、「イスラムフォビア」(イスラムへの嫌悪)という表現が欧米に登場している。こんな用語が使われるまでになった西欧の「イスラム嫌い」の現状や背景について、内藤さんが論じた。

内容はキリスト教とイスラムそれぞれの社会・文化における根源的な違いその違いの中で、イスラムの人たちが多く住むようになった西欧で起きている対立や摩擦イスラム国トルコのEU加盟問題──などが中心になった。

イスラムは人間の生活すべてが神に奉仕されるべきものと考える。社会制度についても同じだ。これに対し、西欧では宗教はもっぱら個人の心の問題ととらえ、社会生活では人間の自由や理性を第一に考える。

二つの世界の摩擦の象徴として、西欧の学校でのスカーフ着用論議が例示された。イスラム社会では自然でも、西欧ではイスラムの示威と映る。さらに「人間の自由や理性を無視」と嫌悪される……。  トルコのEU加盟問題では、内藤さんは加盟に否定的な意見が台頭していることを紹介。「文明の衝突」を推進しかねないと指摘した。

いま西欧に住むイスラムの人はフランスで600万人(人口の10%)、ドイツで300万人(3・7%)、英国で150万人(2・5%)と推計されている。その多くが自分たちのアイデンティティーや生活規範をイスラムに求めている。一方で、西欧社会の方は自分たちに同化しない人たちにいら立っている。

問題のすべてが必ずしも「イスラムと西欧」に起因するわけではない。そもそも両者の性格づけも難しい。そんな疑問も残ったが、「異なる世界」が調和することの難しさを考えさせてくれる1時間半だった。

ゲスト / Guest

  • 内藤正典 / Masanori Naito

    一橋大学大学院教授 / Professor, Hitotsubashi University Graduate School

研究テーマ:中東ベーシック

研究会回数:6

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