2005年05月25日 00:00 〜 00:00
保坂修司・日本エネルギー経済研究所研究主幹「中東ベーシック」5

会見メモ

入門、サウジアラビア

使用した資料です。
http://www.jnpc.or.jp/files/opdf/146.pdf

会見抄録
http://www.jnpc.or.jp/files/opdf/145.pdf


会見リポート

サウジ地方選挙に見る新しい波  

最首 公司 (「季刊アラブ」編集委員 個人会員(中日新聞出身))

保坂氏はサウジアラビア定点観測者の数少ないひとりである。今春行われた地方選挙も現地調査を行った。その保坂氏は「いつもサウジは大丈夫かと聞かれる」と苦笑する。

サウジアラビアにとって、唯一の脅威は宗教勢力だが、70年代、石油収入の増大とともに地位向上を果たすテクノクラートとのバランスをとるため、政府は「ウラマー」(宗教指導層)を国家公務員とし、ワッハーブ派宗家(シェイク家)を教育行政の責任者に当てた。宗教勢力を体制内に取り込むことで、王家は過去、幾度かの危機を乗り切った。

しかし、独特の宗教教育を受けた若者たちは、アフガンでの対ソ連戦で勝利感を味わい、帰国後はサウジ駐留米軍に矛先を転じた。その米軍が撤退して、刃が王家に向かおうとしたとき、イラク戦争が起きた。

保坂氏によると、現代サウジの社会構造は、60%の「アパシー(ノンポリ)層」を挟んで、右に「リベラル」、左に「宗教保守派」がそれぞれ20%ずつ控え、後者の右翼が「穏健派」、最左翼が「テロリスト」。そして「リベラル」を構成するテクノクラートやビジネスマンと、「宗教穏健派」が「サフワ(覚醒者)」と呼ばれるサウジ改革運動の担い手。この「サフワ」が21世紀サウジのキーワードだと指摘する。  私はサウジを部族の縦糸と、イスラームの横糸で織られる布にたとえるが、地方選挙を実見した氏は、地方区では部族でも、イスラーム主義でもない階層が善戦したという。地方の新たな波が都市部の「サフワ」に合流するとどうなるだろう。

最後に「日本の主要な原油供給国であるサウジアラビア情報が欧米経由であるのは、メディアの怠慢」という氏の一言は痛かった。


ゲスト / Guest

  • 保坂修司 / Shuji Hosaka

    日本エネルギー経済研究所研究主幹 / Senior Research Fellow, The Institute of Energy Economics, Japan

研究テーマ:中東ベーシック

研究会回数:5

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