2005年04月12日 00:00 〜 00:00
駒村康平・東洋大学教授「社会保障(3)年金」8

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会見リポート

転職社会に合う制度を

吉田ありさ (日本経済新聞経済部)

政府の年金改革法が成立してからほぼ1年。年金問題は今なお世論調査で政策課題のトップを占める。なぜ国民は年金不安を払しょくできないか。必要な改革は何か。この疑問にこたえるべく、駒村教授は昨年の年金改革の評価から入った。

昨年の年金改革ではマクロ経済スライドという給付抑制の仕組みが整い、年金財政問題はほぼ解決した。半面、フリーター増などの社会変化に対応しきれなくなった制度体系は放置した。だから駒村教授の採点は「辛くて50点、甘くても60点」と厳しい。ただし改革を協議する与野党合同会議が今春始まった点は評価し、「(昨年の改革は前期試験で)後期試験で体系論に踏み込む必要がある」と今後に期待する姿勢も見せた。

焦点に挙げた制度体系については「転職が増える社会の変化を考えると制度を一本化に近づけるのが望ましい」と指摘。当面は加入者が勤め人の厚生年金、共済年金の一元化にとどめるという与党案よりも、国民年金も含めた一元化を主張する民主党案を支持。低所得者の未納問題を解消するためにも保険料負担はすべて厚生年金のような所得比例に切り替えるよう求めた。

ただ、国民年金を含めた制度一元化には、国民年金に加入する自営業者の所得捕捉が欠かせない。この問題には「私は税の専門家ではなく、具体策を挙げるのは難しい」と踏み込むのを避け、聴衆は肩透かしをくった格好。所得捕捉の問題は医療や介護など社会保障のあらゆる制度で常に浮上してくるが、与野党協議でも真正面から議論するのを避けるほど政治的タブーと化している。せめて人気取りに走る必要のない学者から社会保障と税の専門家が集まり、協議会方式で具体的な解を探る試みがあれば、と思う。

ゲスト / Guest

  • 駒村康平 / Kohei Komamura

    東洋大学教授 / Professor, Toyo University

研究テーマ:社会保障(3)年金

研究会回数:8

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