2005年03月16日 00:00 〜 00:00
加藤幹之・富士通経営執行役・法務・知的財産権本部長「知財戦略」

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会見リポート

知財文化革命を提唱

田上 幹夫 (朝日新聞知的財産センター長)

いわゆる警世家を多弁派と寡黙派に分ければ、加藤さんはさしずめ前者の典型だろう。いま最も旬の「知的財産(知財)」をテーマに、この日も警鐘を鳴らし続けた。

その訴えるところは多岐にわたるが、知財問題に対する我が国の認識は総じて薄い、という危機感が言葉の端々ににじむ。先年、「知財立国」を標榜し、法制度は一応の形を整えた日本だが、政府はもとより企業、個人に至るまで、この国の置かれた状況を本当に理解しているのは一部に過ぎない。それは約17年間の滞米生活で超大国の底力を骨の髄まで味わった人ならではの悲憤だ。

たしかに、ヒト、カネ、モノに次ぐ第4の経営資源、知財のすそ野は広く、未整備の課題は多い。特許についていえば、年間の出願件数は米国を上回るが、大事なのはその中身であり、特許を含む知財全体の総合的な活用法である。約8万件の特許を持つ富士通の知財責任者として、「特許だけに頼るまい」との自戒を込めた指摘、とみた。

「日本には『知財文化革命』が必要です」。警世家はそう説いた。情報・技術の管理はすきだらけで、形のないもの(知財)にカネを払う文化も定着していない。だが、知財権の侵害は犯罪的であることをもっと肝に銘じたい。企業や社会の中で相互の権利を尊重し合う風土をはぐくみ、「Me、too」(私も同じ)の思想から脱して「Only me」(私だけ)の社会に至る、というのが「革命」の骨相だという。

「《ユーザー主体の社会》への変化を先取りし、機敏に対応せよ」「国際的な制度改善の先頭に」。これらを具体化する道筋も含めて、私たちは今後も警世家の提言に耳を傾け、そしゃくせねばなるまい。

ゲスト / Guest

  • 加藤幹之 / Masanobu Kato

    富士通経営執行役・法務・知的財産権本部長 / Executive Officer / Head of Legal & Intellectual Property Rights, Fujitsu Limited

研究テーマ:知財戦略

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