2005年02月23日 00:00 〜 00:00
谷内正太郎・外務事務次官

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会見リポート

凜とした外交目指す

横山 立 (共同通信論説副委員長)

明快な外交哲学と論理を持った外交官である。

「凜とした志のある外交を目指したい」と基本姿勢を披歴。そのためには「国家の座標軸をきちんと設定して外交を行う」と述べながら、座標軸の設定とは国益の追求であり、国益とは安全保障であり、国家の究極的な存在理由は安全保障であると、数学の命題を帰納法的論証で解くような論理を展開した。

ロサンゼルス総領事時代に、ロサンゼルス・タイムズが谷内氏を特集記事で取り上げ「官僚的でない誠実な人物」と称賛したことがある。同僚に聞いたら「外交官らしからぬざっくばらんな人柄」と同じような答えが返ってきた。

イラクの政治プロセスについて、「イラクのイラク化」を進める立場から日本の支援を強調、「歯をくいしばっても支援を進める」と情緒的な言葉も飛び出した。

対北朝鮮政策の基本方針では「対話と圧力」を掲げ、「したたかに、しかし、しなやかに」と、制裁論とは一線を画す姿勢をあらためて示した。同時に経済制裁はいろいろな方法があると述べ、制裁派への配慮もにじませた。

官房副長官補を務めたことから、官邸の信任も厚い。「外交と内政の一体化」という持論を聞いたとき、外交を「内政と外政のアンサンブル」として、近代欧州の外交舞台でらつ腕を振るったフランスの外交家タレイランを思い出した。

国際社会は相変わらず戦争やテロに脅かされており、外交の重要性は高まるばかりだ。日本の国際貢献のために、谷内氏には国際政治の現実を冷静に分析し、「凜とした外交」を推進するようお願いしたい。

ゲスト / Guest

  • 谷内正太郎 / Shotaro Yachi

    日本 / Japan

    外務事務次官 / Vice Minister of Foreign Affairs

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