2004年12月14日 00:00 〜 00:00
ハワード・ベーカー駐日アメリカ大使

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会見リポート

離任スピーチにのぞいた「懸念」

加藤 洋一 (朝日新聞外報部次長)

当クラブで3回目となった今回の会見は、2月に離任するという正式発表の3日前だったが、内容も会場の空気も、実質的には「お別れ会見」だった。

冒頭のスピーチは日米関係の強さの解説から始まり、イラク、北朝鮮、日中関係、そして在日米軍の再編問題まで含む幅広いものだった。いかにもベテラン政治家らしく配慮の行き届いた内容だったが、いくつか刺激的な発言もあった。

その第一は、「日本経済が活性と成長を取り戻さなければ、世界で日本はその影響力を次第に失っていく」

似たような発言は、今から数年前、日本経済の回復のもたつきが、米側で深刻な安全保障問題だと認識され始めた頃、米政府関係者から盛んに聞かされた。大使が「回復に向けた心強い兆候が見られる」としながらも、あらためてこの点に言及したことからは、3年半に及んだ自らの任期をへても完全には回復しなかった日本経済に対して、不安と懸念を抱いていることがうかがえる。

いま一つは、「台湾海峡をめぐる危険は非常に現実味を帯びたもので、全世界を見渡しても、最も対応の困難な危険な場所の一つだ」。

テロとの戦いを進めるなかで、米中関係は大きく好転したように見えるが、両国が衝突しかねない台湾問題は、依然として深刻な状態にあることを印象づけた。

一方、「東アジア共同体構想」にコメントを求められると「これは答えるべきでない質問だ」として、回答を拒否。構想から「はずされる」形の米政府が、神経質になっている様子を語らずして明確に示した。

ゲスト / Guest

  • ハワード・ベーカー / Howard Henry Baker Jr.

    米国 / USA

    駐日米国大使 / Ambassador to Japan

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