2004年12月16日 00:00 〜 00:00
町村信孝・外相

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会見リポート

「志」と「ソフトパワー」

笠原 敏彦 (毎日新聞外信部副部長)

町村外相は開口一番に「忙殺され、ものを考える時間がない」と切り出した。その上で、半年、1年後には日本外交における「町村ビジョン」を示したいと表明。約1時間の会見を聞く限り、そのビジョンの主旋律を奏でるキーワードは「志」と「ソフトパワー」かと感じた。

北朝鮮の核・拉致問題、対中関係、イラク復興への関与…。日本外交の課題は多いが、個々の対応に追われるだけでなく、外交全体を貫く理念、行動指針を持つことは重要だ。「日本が志の高い国、国民であると思われるように努力したい」。町村外相は「志」という言葉を強調しながら、日本外交の指針を分かりやすく示してみせた。

戦後日本の国際社会での評価とは「羽振りのいい善人」「お人好し」というものだろう。しかし、91年の湾岸戦争での厳しい批判で突然、目覚め、コンパスなき航海に乗り出した。国連PKOへの参加、イラクへの自衛隊派遣、等々。外相は「ようやく日本も国際社会と一緒に汗を流す国になった」と自己評価した。

それでも、国際社会の評価となると、相当に怪しい。「志が高い外交」とは何か。これを、町村外相は、軍事力ではなく、いわゆる「ソフトパワー」に重点を置いた外交だと、説明した。一国の文化や価値観が持つ影響力「ソフトパワー」をいかに発揮するかが、今後の日本外交の一大テーマだとの認識だ。

町村外相は外遊の度に、現地の青年海外協力隊員に必ず会う、という。そんな行動も、「ソフトパワー」への思い入れを象徴するのか。安保理常任理事国入りという高いハードルを前に、いかなるビジョンを構築するのか注目したい。

ゲスト / Guest

  • 町村信孝 / Nobutaka Machimura

    日本 / Japan

    外相 / Foreign Minister

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