2004年11月12日 00:00 〜 00:00
ソナム・ヤンチェン・ラナ・UNDP・HIVと開発プログラムコーディネーター「HIV/エイズ」19

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会見リポート

静かなる嵐

宮田 一雄 (産経新聞論説委員兼編集委員)

世界中でエイズの病原ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染している人(HIV陽性者)の20%はアジアに住んでいる。アフリカに次いで2番目に陽性者人口の多い地域なのだが、それでもタイ、ミャンマー、カンボジア以外はまだ流行の初期段階にすぎない。

このことはHIVの感染が今後、アジアでますます拡大するおそれがあることを示す一方で、いま有効な対策がとれれば、エイズの流行を初期段階のまま抑える可能性が残されていることも意味している。

こうしたアジアの現状について、ソナムさんは「アフリカでいま流行が深刻な国も、10年前には現在のアジアと同じような状態だった。早く手を打つ必要がある」と語り、日本に対しては「アジアに吹く風が、特定の国だけ避けて吹くと考えるのは間違っている」と訴えた。

今回はアジア太平洋地域のHIV陽性者の写真集『QuietStorm静かなる嵐』の日本語版発行を記念して来日。「陽性者は2つの闘いを続けている。ウイルスとの闘い、社会的な偏見や差別との闘いです。アジアではいまも誤解や思い込みから生じる偏見が強く、陽性者の多くがひそかに隠れ、孤立して生活している状態です」という。

会見には日本のHIV陽性者ネットワーク組織JaNP+(ジャンププラス)の代表で、写真集にも登場している長谷川博史さんが同席し、アジア太平洋HIV陽性者支援基金の発足をあわせて発表した。写真集の収益も基金に寄付され、困難な「2つの闘い」を続ける人たちの直接の支援に役立てる予定で、長谷川さんは「陽性者自身が陽性者の支援に動き出した。アジアの新しい動きに注目してほしい」と語った。

ゲスト / Guest

  • ソナム・ヤンチェン・ラナ / Sonam Yangchen Rana

    国連開発計画・HIVと開発プログラムコーディネーター / UNDP

研究テーマ:HIV/エイズ

研究会回数:19

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