2004年10月06日 00:00 〜 00:00
江頭寛・日本経済新聞編集委員「著者と語る」

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会見リポート

プーチン帝国のなぞ解き

大野正美 (朝日新聞論説委員)

せい惨な北オセチアの学校テロ、知事を任命制に変えるなど大胆な政治制度改革と、ロシアが世界を揺るがすなか、ベテランのクレムリン・ウオッチャーによる刺激的なプーチン体制のなぞ解きが会場をわかした。

江頭氏は、1999年の『ロシア 闇の帝国』に続いて今年6月にも『プーチンの帝国』(いずれも草思社)を出版した。そこでは、膨大な情報が手際よく料理され、複雑でとらえがたいロシア政治の動きを、明快な構図の中にまとめている。

語る会での話も、著者と同じように情報の鋭い分析と大胆な仮説が随所にちりばめられ、自然と聞き手の興味をかきたてる内容となった。

たとえば、「5月にチェチェンのカドイロフ大統領が暗殺された。彼はひそかに独立派のマスハドフ元大統領と和平交渉をし、それが暗殺の背景になったとの見方がある」。

「旧ソ連国家保安委員会(KGB)でプーチン大統領の同僚だった側近たち、いわゆるシロビキが政権内で力をつけ経済利権の分野にも進出を始めている。東シベリアとナホトカを結ぶ石油パイプラインも、シロビキの影響を受けている企業が推進者の役割を果たしている」

来年2月にプーチン氏の訪日が予想される日ロ関係については、「外相が森派から出るなど、森元首相が外交に影響力を発揮しているようだ。森氏は日ロ賢人会議の日本側代表でもある。かつて2島返還論に踏み込んだ森氏の路線が復活する可能性もなきにしもあらずだ」と語った。ただし、領土問題では、「2月に訪日でプーチン氏は、再び話し合いのレールに復帰しようというぐらいでは」との見方も示した。

プーチンの帝国は実際どう動くか。注意深く見守りたいものだ。

ゲスト / Guest

  • 江頭寛 / Hiroshi Egarashi

    日本経済新聞編集委員 / Editorial Board, Nihon Keizai Shimbun

研究テーマ:著者と語る

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