2004年10月08日 00:00 〜 00:00
モハメド・エルバラダイ・IAEA事務局長

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会見リポート

食えない男

太田泰彦 (日本経済新聞論説委員)

「本命」とされたノーベル平和賞の受賞者発表の日に、奇しくも会見が重なった。「私の名前が候補に挙がるのは、IAEAの役割が国際社会に認められているということ。それこそが大事なメッセージだ」。

そつなく、面白みに欠けるコメントだ。ニコリともしなかった。会見時間は受賞者が判明する直前だったが、この人は選に漏れたことを事前に知らされていたのだろうか。ウィーンから伝え聞く「食えない男」という風評通り、質疑応答はよどみなく、突発発言もなく、淡々と進んだ。

言葉に少し熱がこもったのは「イラクには実際には大量破壊兵器はなかった」とする米政府の調査団の最終報告について語ったときだ。

「開戦前に実施した我々の査察結果が正しいことが証明された。ただ、戦争でしか証明できなかったが。戦争を始める前に私たちの言葉に注意深く耳を傾けてほしい……」

ブッシュ政権に嫌われるのもうなずける。この人は自信家であるだけでなく、かなりの頑固者である。IAEAは米国の思い通りにはならない、という自負がにじみ出た。

そして多分、楽天家でもあるのだろう。来年6月の事務局長選で3選を目指す意欲は満々。「多くの国々から続投を求められている」と、国際機関の長は2期が原則というジュネーブ・ルールを気にするそぶりもみせなかった。ブッシュ大統領が再選されれば、米国からの風圧が高まるのは間違いない。かといって、米国と仲良くしすぎれば、その独立性に疑問符が付き、国際社会からの信用が失われる。

IAEAに君臨する政治家エルバラダイ氏の本当の勝負は、来年から始まる。

ゲスト / Guest

  • モハメド・エルバラダイ / Mohamed ElBaradei

    IAEA事務局長 / Secretary-General, IAEA

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