2004年10月05日 00:00 〜 00:00
寺田雅昭・食品安全委員会委員長

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会見リポート

全頭検査の限界克服は

木村良一 (産経新聞社会部)

「食の安全」を重視して世界で唯一、日本だけが実施し、生後23カ月と21カ月のBSE(牛海綿状脳症)感染牛を見つけ、「若い牛に感染はない」という世界の常識を覆し、BSE研究に新たな一歩を示した全頭検査を簡単にやめてしまってよいのだろうか。この疑問を少しでも解決したくて寺田雅昭委員長の会見に出席したが、残念ながら納得できる解答は、得られなかった。

「感染牛パニックの中で始まったのが全頭検査。これまで行われた350万頭の牛の全頭検査から判断して現在の検査では、20カ月以下の感染牛を発見するのは困難。しかし、国民の間に『全頭検査と安全は等しい』との考えは根強く、『全頭検査をやめ、20カ月以下の牛を検査から除外しても安全性は失われない』とはなかなか理解してもらえない」。要約すると、これが寺田氏の説明で、9月にまとまった内閣府食品安全委員会の「中間とりまとめ」となんら変わらない。

全頭検査は、食肉処理されるすべての牛を対象に牛の脳幹の一部(延髄)を抽出して病原体の異常プリオンの有無を調べるシステム。2001年9月に国内第1号の感染牛が確認され、翌10月からスタートした。異常プリオンの蓄積が微量な若い牛の検査の限界は、以前から指摘されていた。今回、寺田氏は検査の限界をできるかぎりなくす新しい検査には言及していなかったが、米国産牛肉の輸入再開のために全頭検査を中止するのではなく、いま必要なのは、検査の限界を克服する研究の推進ではないか。人が異常プリオンに感染すると、脳がスポンジ状になり、死を待つだけだ。治療方法や異常プリオンが中枢神経に広がるメカニズムなど不明な点は多い。こうした点の解明にも、研究は役立つ。

ゲスト / Guest

  • 寺田雅昭 / Masaaki Terada

    日本 / Japan

    食品安全委員会委員長 / Chairman, Food Safety Comission

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