2004年10月20日 00:00 〜 00:00
本間正明・大阪大学大学院教授「年金改革」6

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会見リポート

年金、医療、介護の横断的連携

池田 健夫 (共同通信政治部)

持続可能な社会保障制度をいかに構築するか。国民の最大の関心事といっていいこの課題について、経済財政諮問会議の民間議員も務める本間教授が、マクロ経済との関係から論じた。本間教授は、今後の社会保障は、成長率の低下、バブルの崩壊に伴う巨額の過去債務、将来の給付に向けての積み立て不足、人口減少による支え手の絶対数の不足という「マイナスサム」の環境の中でデザインしなければならないと指摘。制度設計を考えるうえで企業負担が重くなれば雇用の海外流出を招く若年層が加入して得だと思える制度設計─がポイントと指摘した。

さらに、「年金、医療、介護の3分野での横断的な連携」を基本原則に、年金では終身雇用制の揺らぎなど時代の変化に対応し、個人単位の識別番号の導入を提案。また、介護保険料だけでなく、国民健康保険の保険料も年金から徴収できるよう制度改正を求めた。年金改革でマクロ経済スライド制が導入され将来の年金給付費の抑制が可能になったように、医療と介護の給付費の伸び率を成長率以下に抑えるべきだとの考えも披露した。

この医療、介護の給付の抑制については翌々日の経済財政諮問会議に民間議員提案として出されたことに象徴されるように、研究会は現実の政策決定過程にからむ、今日性に富んだ内容だった。今回の年金改革で政府は「負担と給付のバランスは取れた」と胸を張るが、国民の間で持続可能性に対する信頼感は高まっておらず、本間教授もさらなる改革の必要性は否定しない。社会保障制度設計は、公的な分野だからといって「官」が独占するのではなく、むしろ「民」の視点が入ってこそ持続可能性が保証されるのではないかと痛感させられた。  

ゲスト / Guest

  • 本間正明 / Masaaki Honma

    日本 / Japan

    大阪大学大学院教授 / Professor, Osaka University

研究テーマ:年金改革

研究会回数:6

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