2004年10月21日 00:00 〜 00:00
S.モンカレ・フィンランド社会保健相

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会見リポート

個人生活の充実が社会活力を

北村 節子 (読売新聞調査研究本部主任研究員)

今後の社会保障に不安を抱えるわが国にとって、高負担高福祉政策をとる北欧各国は気になるモデルだ。その路線をリードするモンカレ社会保健相は「高齢者を尊ぶ文化を持つ日本とわが国は、ともに少子高齢化社会のモデルを提示するべき立場」と、切り出した。

現在、同国が社会活力保持のために目指しているのは、よく言われる「女性の雇用率アップ」のほか、「若年層の早期労働市場参入」と「高齢者のリタイア延長」だという。たしかに、授業料無料の大学生活を長く享受する若者は多く、この特典を「どう調整するか」は大きな課題だろう。中高年雇用率アップのためには、「勤労者個人個人に魅力的な職場生活環境を整備する」プログラムが進行中と語る。「各種厚生制度充実は企業にとってはコストだが、有益な資本投下でもある。結局、勤労能力増強に結びつきます」。

この流れに沿って、年金制度も来年度から「給与連動型」に改変される。就労期間が長くなれば年金額はそれに見合ったものに。具体的には現在59歳の「退職→年金受給」を2、3年、後にシフトするのが狙いだ。

在宅を中心とした手厚い高齢者ケアについては「高負担が国民に受け入れられているか」との質問が出たが、「高齢者ケアは国家の責任。これは70年代来の国民コンセンサス」とゆるがない。さらに「今年も世界経済フォーラムの世界競争力ランキング首位獲得。企業社会も同意してます」と自信を見せた。

競争原理導入など、米国的経済・労働のスタイルがもてはやされるなか、「マスの数字操作より、まず個人生活の充実。それが全体の意欲に結びつく」という信念は、やはり刺激的なヒントだ。

ゲスト / Guest

  • S.モンカレ / Sinikka MONKARE

    フィンランド / Finland

    社会保健相 / Minister of Social Affairs and Health

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