2004年09月06日 00:00 〜 00:00
E.モリス・映画監督

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会見リポート

「華氏911は見ていない」

芋原 一善 (テレビ朝日報道局報道企画部長)

「人間は謎に満ちている。マクナマラがおかれていた状況の複雑さを描きたかった」

映画「フォッグ・オブ・ウォー」でアカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を獲得したエロール・モリス監督を迎えた。

ニューヨーク支局で特派員をしていたころケネディ政権と自民党とのかかわりを取材しようとして、ラスク元国務長官やマクナマラ元国防長官にインタビューを申し込んだことがある。ラスク氏は故郷のジョージア州で病床にあり、マクナマラ氏からはすげない返事が返ってきた。

「出演交渉は困難なものだったが、映画を撮り終えたいまも彼とは良い関係にある」。マクナマラ氏はモリス監督の力量を認めたからこそ取材・撮影に応じたのだろう。また、回顧録などの活字だけではなく、自らの証言を信頼できる作り手の手で映像としても残したい、と考えたのに違いない。

ひとりの老人へのインタビューと資料映像のみの構成。しかし、2時間あまりのこの映画は見る者をぐいぐい引きこんでゆく。マクナマラ氏へのインタビュー時間はあわせて20時間ほどだったという。意外と短いなと思われる人も多いのではないか。「11の教訓」として全体を構成する手法も編集の最後に近い段階で決めたそうだ。マクナマラ氏が撮影を最終的に了承したあと、モリス監督はどのような構成やインタビューの撮り方を最初に構想したのかなど、もっと突っ込んで聞きたかった。

「『華氏911』は見ていない。マイケル・ムーア監督とはアプローチの仕方が違う」。この言葉に一見おだやかなモリス監督の強烈な自負心を感じた。

ゲスト / Guest

  • E.モリス / Errol Morris

    映画監督 / Movie Director

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