2004年09月16日 00:00 〜 00:00
川口順子・外相

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会見リポート

異色外相のお別れ会見

伊奈 久喜 (日本経済新聞論説委員)

川口さんは、戦後日本外交史のなかで異色の外相のひとりだ。議席を持たないだけの理由ではない。

とにかく世界を動き回った。この会見も訪中と訪米の間に挟み込んだ。だからなのか、中東に始まり各地を経て日米関係で終わる、地球儀をなで回すような話しぶりだった。

英語で仕事ができる点も理由のひとつ。当クラブの次に外国特派員協会で1日に2度目の会見をした。当然ながら英語でこなす。

だが安倍晋太郎も外相時代に激しく動き回った。古くは吉田茂、やはり非議員だった大来佐武郎も英語で仕事ができる外相だった。

川口さんが異色外相たる最大の理由は、頑張っているのに、なぜか国際的にも国内的にも存在感が薄かった点だ。

某国の外交官の間で「ナン」と呼ばれると聞いた。nun(尼さん)ならばわかる気もするが、none(何一つない)との説も聞く。

ベーカー駐日米大使は自分のカウンターパートは外相ではなく福田官房長官だと考えていた。川口さんは小泉政権の官邸主導外交を支える功労者だったのだろう。

それでも「誇るべき仕事は」との問いに「きょうお話ししたことすべて」。自信たっぷりだった。

本意でなかった前外務次官の駐英大使起用を了承したのを見ると、内閣改造での退任を想定したのは明らかだった。当クラブで5度目になる会見は締めくくりの意味だったのだろう。

外相を経験し、外交担当の首相補佐官に転じた川口さんは日本にとって貴重な国際的資産なのだろう。いつかきっと別の立場で6度目の会見をし、今度は存在感を見せてくれると思う。

ゲスト / Guest

  • 川口順子 / Yoriko Kawaguchi

    日本 / Japan

    外相 / Foreign Minister

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