2004年07月27日 00:00 〜 00:00
宮島洋・早稲田大学教授「年金改革」5

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会見リポート

構造変化への総合的対応を

日浦 統 (朝日新聞経済部・生活部)

年金をはじめ医療、介護などの社会保障制度の一体的な改革の行方に注目が集まっている。政府の「社会保障の在り方に関する懇談会」の初会合を前にメンバーである宮島教授から話を聞いた。

社会保障審議会の年金部会長として、自ら検討にかかわった年金改革法については「政治リスクから先送りされてきた保険料の引き上げと給付水準の抑制を実現した」と高く評価。懇談会ではまず年金改革をベースに、医療や介護などの自己負担、給付の配分などを議論していくことになるだろうとの見方を示した。

日本の社会保障は大きな転換点を迎えている。少子化や年功序列・終身雇用制度の終えんで「家族」や「企業」の果たす役割は縮小した。政府の果たす役割は増しているが、財政再建を進める観点からは社会保障も効率化は避けられない。

医療技術の高度化を踏まえて、宮島教授は今後の目指すべき方向性として「年金よりも医療や介護などの現物給付の重視」を訴えた。そして、改革を単なる枠組みの変更に終わらせないためには「社会や経済の構造変化への総合的な対応が大切だ」とも強調した。いくら制度をいじったところで、少子化対策や経済成長の維持、高齢者の就労の確保などの制度を支えるインフラが崩れれば、意味を失うとの主張には、説得力があった。

消費税を含む財源問題も含め、改革には政府一丸となった取り組みが必要である点も実感した。懇談会での議論が実りあるものになることを期待したい。


ゲスト / Guest

  • 宮島洋 / Hiroshi Miyajima

    早稲田大学教授 / Professor, Waseda University

研究テーマ:年金改革

研究会回数:5

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