2004年07月05日 00:00 〜 00:00
ベルナール・ド・モンフェラン・駐日フランス大使

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会見リポート

経済版 安保理の構想

桜庭 薫 (日本経済新聞国際部)

会見後の質問はおのずとイラク問題に集中した。新国連決議で多国籍軍が創設された後もフランスが派兵を拒み続けることに会場から疑問の声があがったが、大使の答えは終始一貫していた。

「戦争の前であれ後であれ、世界は一丸となって努力しないといけない」──。大使の言葉からにじみ出るのは力で武装勢力を鎮圧してイラクの安定を目指す手法より、経済・社会・文化の多方面にわたる支援の方が有効と信じていることだ。フランス外交の根本にあるのは憎しみを生む武力闘争に代わり、高度な政治力で長期的に安定をもたらす関与の仕方を探り続けることだ。

グローバル化のひずみが顕在化する中、フランスの外交力・政治力がいまほど求められている局面はないだろう。大使の目は経済にも向けられ、「秩序だったグローバル化を実現するため誰もが守ることのできるルール作り」の必要を訴え、世界の経済機関を統括する「経済版の国連安保理」の創設を提唱した。

大使の熱弁の裏には、フランス一国では決してできない世界の和平構築という困難な作業に「平和国家」日本の力を借りたいという深謀があるのかもしれない。学者出身の大使の話を聞くうちに、優れた教育者が頭ごなしに答えを押しつけず、生徒自身に答えを考えさせることに思いが至った。

日本の針路が問われるなか、一部の政治家の米国盲従で変節する日本に不安を覚える外国人が多いということを再認識させられたひとときでもあった。

ゲスト / Guest

  • ベルナール・ド・モンフェラン / Bernard de MONTFERRAND

    フランス / France

    駐日フランス大使 / Ambassador to Japan

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