2004年06月09日 00:00 〜 00:00
猪口孝・東京大学教授「著者と語る」

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会見リポート

日本社会にダイナミズムを

伊波新之助 (個人会員(朝日新聞出身))

日米和親条約から150年になる今年、「猪口孝が読み解く『ペリー提督日本遠征記』」の著者である教授から話を伺った。

奥さんの猪口邦子上智大学教授が軍縮大使として活躍したことが夫人ご自身の口から語られたばかり。司会者が「ひと月のうちにご夫婦が出るのは初めて。奥さまの方が少しだけ有名ですが」と紹介したのでそれに刺激されたか、自ら「新潟の田んぼ生活のまま」と称する自由な語り口で会場の空気を楽しくした。

昔から世界を当惑させているのが米国の一種宗教的な信念である。幕末の日本は砲艦外交に裏付けられた「神の定めとしての西進」の信念にもつきあわされた。

その屈辱感は以後日本外交の基調低音の一つになったと著書はいう。話は研究余話の方に進んだ。

アメリカでは公務に就くのは名誉なことで、いかにして上に行くか、誇れることをやるか、歴史に残る仕事ができるかに心を砕く。

そして自分の業績については後世の歴史家の判断などは待たない。愛国心、野心が一体となって自分が書く。書き手を雇って書かせる。ペリーもクリントンも、他の高官もしかり。内ゲバが激しいからみんな必死である。

一方日本人は有能でまじめだが何も残さない。だからペリーとの折衝の日本側の息遣いは何も残ってない。自伝を残す人はいるが周りに気を遣い、面白くない。

キッシンジャーの「日本人は事を決めるのに15年かかる」との説も紹介し、日本人はもっと自分を押し出せ、そして社会にダイナミズムを、と言外に訴えられた。

ゲスト / Guest

  • 猪口孝 / Takashi Inoguchi

    東京大学教授 / Professor, Tokyo University

研究テーマ:著者と語る

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