2004年06月07日 00:00 〜 00:00
広瀬弘忠・東京女子大学教授「HIV/エイズ」16

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会見リポート

災害心理学とメディア

安田 幸一 (読売新聞科学部)

今世紀に入り、SARSや鳥インフルエンザなど、目新しい感染症がアジアを中心に世界で流行し、死者が続出した。未知の病原体を前にして恐怖心が先走り、パニックにも似た現象が起きて、世界経済も混乱に陥った。科学的に未解明で、人間に重大な被害をもたらす「新興感染症」は、過去30年だけ見ても30種以上が確認されている。来たるべき未知の感染症の危機に、どう向き合えばいいのか。

災害心理学を専門にしながら、HIVを中心に感染症対策の研究にも取り組んできた広瀬弘忠さんは「研究者と行政、一般市民が、危険性に対して相互にコミュニケーションを繰り返して理解を深め、対処法を共有していかなくてはならない」と解説。「情報の担い手であるメディアへの依存度は極めて高く、肥大化している」とメディアの役割の重要性を強調した。

米国で1981年、男性同性愛者の間でエイズが報告された時、同性愛者への偏見を助長するような報道が国内で相次いだ。「感染者は、病気という肉体的な苦痛に加えて、社会的生命も失った」と話し、不明確な段階での情報を、確定的な印象をもって発信することは、新たな被害を生み出す危うさがあるとした。

特に、「日本は、個人の持つ偏見が容易に統合され、社会全体の偏見として形成される社会」と見る。こうした脆弱な社会において、科学的冷静さを失わない、バランス感覚により配慮した報道が不可欠であるという指摘は重要だった。

ゲスト / Guest

  • 広瀬弘忠 / Hirotada HiROSE

    東京女子大学教授 / Professor, Tokyo Woman's Christian University

研究テーマ:HIV/エイズ

研究会回数:16

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