2004年06月07日 00:00 〜 00:00
鄭埈明・日本サムスン前社長

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会見リポート

サムスン高成長の要因

鈴置 高史 (日本経済新聞経済解説部長)

「韓国の仁川国際空港で『日本人はあっちに並んで』と言われる」鄭埈明社長。通算18年に及ぶ日本での勤務を終え、帰国する直前の会見だった。

初来日は74年。当時、韓国のGDP(国内総生産)は日本の24分の1。「地下鉄もスーパーも初めて東京で見て驚き」、「石田梅岩を学び、マックス・ウエーバーと比べ200年も早く労働哲学を確立した日本に感動し」、「日本を目標に朝から晩まで働いてきた」韓国の働きバチ世代だ。

もっとも、最近は首をかしげることが増えた。「日本の会社に電話をすると、昔はすぐに誰かが出たものなのに、今は信号音を10回鳴らしても出てこない」、「『朝顔に釣瓶とられて…』といった繊細さや、思いやりの心が薄れた感じ」。

サムスン電子は今や一兆円の利益をあげる世界の超優良企業。鄭埈明社長は成功の要因をオーナーの強力なリーダーシップの下の大胆な経営改革スピーディーな意志決定徹底的なマーケット志向──の3点で説明した。特に90年代初めからの経営改革の大胆さは日本人の想像を絶する。日本型の終身雇用・年功序列を完全に改め、早期退職制度を導入して会社を若返らせた。「グループに従業員は30万人いるが、59歳の私より年上は4人しかいない」。

ただ、鄭埈明社長は両国を対立概念では見ていない。「韓国は日本以上の速さで少子化、高齢化社会に突き進む。女性や外国人の活用など両国共通の課題も多く、共に研究すべきだ。『近くて近い国』になったのだから」と結んだ。

ゲスト / Guest

  • 鄭埈明

    韓国 / Korea

    日本サムスン前社長 / Samsung Japan

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