2004年05月25日 00:00 〜 00:00
トラヤ・オベイド・国連人口基金事務局長

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会見リポート

サウジ出身の事務局長

迫田 朋子 (NHK教育番組センター・チーフディレクター)

イラクにおける母子保健の状況はますます悪化しており、妊娠・出産にかかわる死亡が増加、輸血体制が整備されていないのでエイズの感染拡大が懸念されている、とオベイド氏はいう。緊急の支援が重要で、日本政府への協力要請が今回の来日の目的でもあった。

アフガニスタンではこれまで行われていなかった人口調査が現在進行中で、これは今後の国政選挙で重要な資料となる。国際情勢が動いているなかで、現地で実際に活動を行っている実施機関としての発言はつねに重みがある。

国連機関の一つを率いる事務局長としての大きな課題は、ブッシュ政権との交渉であったであろうと推測される。オベイド氏が就任したのが01年1月。同じ月、就任式を行ったブッシュ大統領が最初に打ち出したのが国連人口基金への拠出金凍結だった。その理由とされた中国での活動については、家族計画の教育などを行うことで中絶は減ってきているという事実を繰り返し伝えているにもかかわらず、凍結されたままだという。

それにしても、イスラム教徒の女性がトップにたって価値観の相違がいつも課題となる家族計画や女性差別の問題を語るのに困難はないのかと思う。サウジアラビアで国からの奨学金を女性で初めて得たというオベイド氏は、メディアのステレオタイプのイスラム教観を見直してほしいと語った。何よりも彼女の存在自体がそれを示しているとも言える。

今年はカイロで国際人口開発会議が行われて10年の節目の年。オベイド事務局長の手腕がますます発揮されることになるだろう。

ゲスト / Guest

  • トラヤ・オベイド

    国連人口基金事務局長 / Secretary-General, UNFPA

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