2004年05月26日 00:00 〜 00:00
寺島実郎・日本総合研究所理事長「米外交の行方」5

申し込み締め切り

会見リポート

日本は〝親米入亜〟路線を

小池 洋次 (日本経済新聞論説委員)

寺島氏の議論が注目されるのは、歴史的視点と具体的な情報に支えられているからである。ビジネスマン、学者、研究所長の三つをこなす超人的な仕事ぶりも、議論の独自性につながっているのだろう。

米外交論の展開は異色であった。最初に世界経済から説き起こし、中国やインドについて説明するというように、実にグローバルである。世界を十分語ったうえで、問題を議論するのは、同氏のアプローチの特質なのかもしれない。スピーチの中で経済動向に関する具体的な事実や情報を数多く示したが、これは、ビジネスの現場に身を置く人だからこそできることだ。 中国の存在がますます大きくなっていることを、具体的な数字を挙げながら説明した。中国との関係で日米関係を展望できる人はそう多くないだろう。

ブッシュ政権に対する批判は米国生活が長い人だけに説得力を持つ。その「力の論理への傾斜」に対する警戒は米国を観察し続ける人ならである。

ジャーナリストが歴史の観察者で記録者であるとするなら、寺島氏こそ、ジャーナリストと呼ぶにふさわしい。つねに現実の政策問題を追い、その解決策を提言する姿勢は一貫している。

寺島氏にはいつも強いメッセージがある。今回は米国の外交がテーマだったが、日本の進路についての警告や提言にも心打つものがあった。「親米入亜」もそのひとつだ。米国との関係を大事にしながら、アジアの国として再度、自己確認することだろう。稀代の論者は憂国の士である。

ゲスト / Guest

  • 寺島実郎 / Jitsuro TERASHIMA

    日本総合研究所理事長 / President, the Japan Research Institute

研究テーマ:米外交の行方

研究会回数:5

ページのTOPへ