2004年03月26日 00:00 〜 00:00
酒井啓子・アジア経済研究所参事

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会見リポート

メディアの〝常識〟のずれを危惧

川崎 剛 (朝日新聞外報部)

「イラクが攻撃されたら、必ず中東爆発とかテロリストはいかに育ったか、というようなおどろおどろしい本が並ぶだろう。20年間、多少なりとイラクを見聞きし調べてきた者の責任として」書いた、という最近作『イラク 戦争と占領』(岩波新書)著者の強い矜持。テレビで一生懸命解説しても、最後に司会者から「宗教や民族が複雑だと大変ですね。放っておくと、ユーゴのように分裂や内戦かもしれませんね」などと引き取られると、一人歩きしていくイメージに力が抜けるという。

イラクについて日本のメディアが持つ多くの「常識」が、少しずつ軸がずれているように酒井さんには見える。例えば、反米軍攻撃が多発するため「テロリストの温床」とされる「スンニ派トライアングル」は、新聞の地図を見ると、スンニ派住民が多く住む本来の三角形よりずっと小さくなっている。米軍に協力的なモスルをはずすために、米国が意図的に面積を狭めたらしく、日本メディアは米国経由の解釈をそのまま流しているのではないか、という疑問だ。

「フセイン政権の残党」や、その後にイラクに跋扈する「アルカイダ」など、米軍、米メディアの用語法は、その背景を注意深く探ってみないと、イラク側の実態は見えにくくなるのではないか、とも。イラクのシーア派が、ホメイニ師に代表される政治的なイスラム主義と異なり、とくに指導者シスタニ師の最近の行動について誤解がみられる、と米国経由の情報に頼りやすい日本メディアに慎重な対応を求めた。

ゲスト / Guest

  • 酒井啓子 / Keiko Sakai

    アジア経済研究所参事 / Associate Director, IDE-JETRO

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