2004年02月13日 00:00 〜 00:00
シャアス・パレスチナ自治政府外相/ファイヤード同財務相

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会見リポート

埋没するパレスチナ問題を憂慮

北村 文夫 (個人会員(読売新聞出身))

イラク戦争は日本を歴史的転機に立たせた。武装自衛隊の初の海外派遣で、日本は抜き差しならぬ状況にはまり込んだ。マスコミがイラク報道に忙殺されるのも仕方あるまい。だがその陰で、中東全体を引き裂いてきたもう一つの抗争への関心が薄れだしている。この争いとは、いうまでもなくパレスチナ・イスラエル対立だ。

第三回日本・パレスチナ閣僚会議のために来日した自治政府閣僚が1時間半の会見で切々と訴えたのは、パレスチナの苦悩を知ってほしいという願いだった。シャアス外相によれば、平和解決への国際世論を集約したはずの「和平ロードマップ(行程表)」は崩壊しつつあり、パレスチナ・イスラエル両国並存というロードマップ終着点は視界から消え去りだした。シャロン・イスラエル政権がヨルダン川西岸に構築する分離壁によって、パレスチナ人は生きるための日々の営みすらも脅かされているという。

「パレスチナ人の未来への希望は打ち砕かれた」と語るシャアス外相は、日本政府に和平努力へのいっそうの関与を求め、ファイヤード財務相はパレスチナ自治政府への財政支援増加を望んだ。

シャアス氏は、米ペンシルバニア大学の名門ウォートン・スクールから経済・経営学博士号を授与された、いわば欧米との対話方法を熟知する知識人だ。洗練された物腰、平明にして明快なレトリック。自治政府がもち得るベスト・スポークスマンだろう。

だがパレスチナ社会には、自爆テロ頻発が示すように憎悪と絶望感が充満する。穏やかな語り口からは、内と外への異なった対応を余儀なくされる自治政府の苦しさを感じとらされた。

ゲスト / Guest

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