2004年02月02日 00:00 〜 00:00
リチャード・L.アーミテージ・アメリカ国務副長官

申し込み締め切り

会見リポート

暗黙の圧力とリップサービスと

吉田 弘之 (毎日新聞外信部副部長)

隆々とした体格、野太い声。イラク、北朝鮮問題が新聞、テレビをにぎわすようになってからアーミテージ氏は米国の政策決定者の一人としてその言動が事細かに紹介され、すっかり日本人になじみとなった。知日派と言われるだけあって憲法改正や集団的自衛権など日本の国内問題にも的確に答えるなど、会見は内容の濃いものとなった。

会見の焦点はイラク情勢と自衛隊のイラク派遣、そして北朝鮮問題だった。副長官はイラク情勢について、現在のイラク国内で発生しているテロの性格が変化していることを指摘。テロの主流がフセイン前政権の残存勢力から、現在は外国のテロ組織によるものになっているとの認識を示した。また自衛隊のイラク派遣については「言葉だけでなく、行動が試される時だ」という小泉首相の発言を引用して賞賛。「イラクはなお危険な場所だ」と明言したうえで自衛隊がいつまで活動すべきかについて「日本政府が決めること」と語った。

表面上、日本政府の意思決定を尊重する形を取っているが、一方で「米国は仕事が終わるまで(イラクに)とどまる」とも述べ、暗黙のうちに圧力をかけたことも忘れてはならない。自衛隊派遣に伴う日本国内の世論の分裂に関して「リーダーシップは、世論に従うことを意味しない」と述べたことは、仮に自衛隊に不測の事態が起こっても、政策に揺らぎがないよう小泉首相に注文したと取ることもできる。

北朝鮮情勢に関しては若干のリップサービスがあった。六カ国協議開催時期について、副長官は「2月16日の金正日総書記の誕生日を六カ国協議の開催で祝うようなことはないだろう。だが協議はすぐに開催できると思う」と語った。ユーモアを交えた発言は、開催時期を的確に示唆していた。北朝鮮と北京の定期航空便のスケジュールなどを考えれば、副長官の発言から推測される開催期日は2月25、26、27日。北朝鮮が25日から協議を開催することを発表したのは会見翌日の3日だった。

もう一つは、拉致問題の扱いだ。六カ国協議では「すべての問題」について討議されるべきだとの米国の認識を改めて強調した。だが協議内容については、中国が「六カ国全部が関心のある問題に絞るべき」との立場を崩しておらず、拉致問題に関するこうした米国の支援体制がどこまで功を奏するのかは不透明だ。

ゲスト / Guest

  • リチャード・L.アーミテージ / Richard Lee Armitage,

    アメリカ / USA

    国務副長官 / United States Deputy Secretary of State

ページのTOPへ