2003年12月04日 00:00 〜 00:00
岩井克人・東京大学経済学部教授

申し込み締め切り

会見リポート

ポスト産業資本主義時代の会社

松本 元裕 (日本経済新聞産業部次長)

「会社とは何か」「会社はだれのものか」──。経済や企業活動に関心がある人間にとって、古くて新しい問いかけであろう。日本や米国で企業の不祥事が相次ぎ、企業の存在意義が改めて問われている。岩井氏は昨年出版した著書『会社はこれからどうなるのか』(平凡社)で、こうした問題に正面から取り組み、高い評価を得た。

良質な本を出した著者を招く「著者と語る」シリーズの第一弾としてクラブを訪れた岩井氏は、自著のポイントを説明したうえで、参加者からの質問に真摯に答えた。岩井氏の主張は大きく分けて二つある。一つは、会社には「ヒト」としての側面と「モノ」としての側面があり、会社を「モノ」としてだけとらえる株主主権論は誤りであるということ。もう一つは、会社にとってカネ(資金)より知識が重要になる「ポスト産業資本主義」の時代には、カネの供給者である株主の力は低下せざるを得ないということである。株主主権の米国型経営を平易な文体で批判したのが時代に受け入れられたせいか、岩井氏の著作の売れ行きは良好だ。

しかし岩井氏は必ずしも日本型経営を礼賛しているわけではない。著書の中でも日本の会社は産業資本主義に適応したシステムであり、「ポスト産業資本主義時代にふさわしい組織になれるか分からない」と述べている。質疑応答でも「日本の会社が(米国型と日本型の)二つのガバナンス方式を選択できるのは良いこと」と指摘しており、単純な「日本型経営vs米国型経営」の図式と一線を画している点が印象に残った。

ゲスト / Guest

  • 岩井克人 / Katuhito Iwai

    日本 / Japan

    東京大学経済学部教授 / Professor, The University of Tokyo

ページのTOPへ